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税金裁判の動向【今月のポイント】第242回 土地の売買契約の合意解除と相続税の課税財産

立命館大学法学部 教授 望月 爾

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土地等の不動産の売買契約後に、その代金決済などの条件が未了であったり、契約が解除されたりする中、契約者が死亡し相続が開始した場合の相続税の課税財産について、当該土地等か売買残代金債権(金銭債権)かが従来から争われてきました。判例や課税実務は、その所有権が売主に残っていたとしても、もはやその実質は売買代金債権を確保するための機能を有するにすぎず、売買残代金債権が相続税の課税財産であるとしてきました。

今回は、相続開始前に売買契約が合意解除された旨の確認書等を添付し、課税財産は土地であるとして相続税の申告をした事案を紹介します。

事実の概要

被相続人Aは、所有の土地(以下「本件土地」といいます。)をB社...