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税金裁判の動向【今月のポイント】第243回 相続により取得した株式の配当期待権と配当所得の二重課税

広島修道大学法学部 教授 奥谷 健

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長崎年金二重課税事件の最高裁判決に代表されるように、相続税と所得税の二重課税についてはいろいろな場面で生じているように見えると思います。しかし、それらは理論的には二重課税でないと判断される場合が少なくないと考えられています。

相続によって取得した株式について、その配当期待権が相続税の課税対象となった場合、当該株式の配当に係る配当所得に所得税を課すことは一見すると二重課税と考えられます。しかし、これは理論的に二重課税といえるのでしょうか。今回はこの点が問題になった事例について紹介します。

事実の概要

原告の父である甲野太郎(以下「亡太郎」という。)は、平成28年4月に亡くなりました。亡太郎を被相続人と...