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税金裁判の動向【今月のポイント】第253回 社会福祉法人の理事長による利益享受と給与所得該当性

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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法人が役員に対して給与等を支払った場合には、当該役員にとっては給与所得( 所法28 ①)となり、法人側は源泉徴収義務を負います( 所法183 ①)。では、法人を実質的に支配している理事長が、不正な取引を行って法人の財産を取得した場合でも、当該利益は理事長の給与所得となり、法人側は源泉徴収義務を負うのでしょうか。

今回はこうした事案をみていきましょう。

事案の概要

(1)原告の概要

原告Xは、平成24年11月2日に社会福祉法に基づいて設立された社会福祉法人です。

Aは、Xの設立以来、一貫して理事長としてXの代表者を務めています(以下、Aを「A理事長」といいます)。また、A理事長の夫BがXの理事を務めています(以下...