※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

税金裁判の動向【今月のポイント】第257回 財産評価基本通達6の適用が認められる「特段の事情」

立命館大学法学部 教授 安井 栄二

( 60頁)

相続財産は、一般的には財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)の定める評価方法に基づいて評価されます。ただし、その評価が「著しく不適当と認められる」ような特段の事情が存在する場合には、その他の方法による評価が許されるとされています( 評価通達6 )。最判令和4年4月19日(以下「最高裁令和4年判決」といいます。)は、実質的には 評価通達6 を適用することを肯定したと解されますが、当該特段の事情に係る判断基準を明示しませんでした。

そうしたところ、 評価通達6 の適用の可否が争われた事案の地裁判決が出ましたので、今回は、その事案についてみてみましょう。

事実の概要

O社は、薬局の経営、医薬品の製造及び販売...