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税金裁判の動向【今月のポイント】第259回 債務免除益に対する課税と二重課税の排除

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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被相続人の借入金が相続開始後に免除された事案について、 本連載第247回 (2023年9月号掲載)では、弁護士費用が一時所得を得るために直接要した金額に当たるかどうかという点を中心に紹介しました。

控訴審では、債務を相続財産から控除せず、債務免除益を相続人の所得として課税することが、相続税と所得税の二重課税に当たるかどうかについて争われています。今回は、この点についてみていきましょう。

事案の概要

改めて事実関係を整理します。

本件における主な当事者と親族関係は、〔図表〕のとおりです。

亡Bは、平成5年9月、G銀行から16億円の借入れを行い、亡Aが保証人となりました(以下「本件貸付」といい、その金銭を「本件...