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税金裁判の動向【今月のポイント】第263回 同族会社に対する不動産の貸付けの合理性

立命館大学法学部 教授 安井 栄二

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不動産賃貸業を営む個人が所有する賃貸用不動産を、自身が設立した同族会社に対して貸し付けて賃貸料を得るケースにおいて、その賃貸料が適正な賃貸料を下回る場合は、一般的に経済合理性を欠くものとして、同族会社の行為計算否認規定が適用されることになります。

そうしたところ、個人が所有する複数の賃貸用不動産を同族会社に賃貸し、その同族会社がさらに第三者に転貸したケースで、その賃貸料が転貸料の60%に満たず適正な賃貸料を下回るとして同族会社の行為計算否認規定を適用した課税処分の適否が争われた事案において、大阪地裁はその処分を取り消しました。今回はこの事案をみていきましょう。

事実の概要

X(原告)は、司法書士業を...