時事談論 vol.46「監査の指導性はどこで生き残るのか?」

解説
( 42頁)

●30年前の夢

公認会計士試験に合格したのは,1990年代初頭。今から30年近く前。受験勉強をしていたのはバブルの真っ盛り。就職活動は売り手市場が続いていて,周りの同級生は何の心配もせず,楽しい学生生活を送っていた。

今考えても,なぜ公認会計士になろうとしたのかわからないが,大学選びをするときに,漠然と公認会計士になろうとしたことは覚えている。文系だが数字が好きで,人と話をするのが好きだったので,今でも自分に合った仕事に巡りあい,それを生業とできたことは,何よりも幸運だった。

会計士になって何をやろうとしていたか?

大学で会計を学ぶと,まあまあ面倒だな,と思った。これは好きじゃないとできないな,とも思い,「だったら,好きじゃない人や得意じゃない人に教えるか,代わりにやればいいじゃないか」と考えた。だから「監査」を学んでいても,監査人ではなく,「会計」士を目指していたような気がする。

●5,000人の組織でやる仕事か?

当時の公認会計士試験科目でもあった「監査論」では,監査の2本柱は「批判性」と「指導性」であるとされていた。前者は今の時代では1本柱になりつつあり,要は「間違いを見逃さ...