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新任社員のための国際税務の仕組みとポイント 第13回 国外関連者に対する寄附金

 公認会計士・税理士 佐和 周

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前回 まではグループ内の二重課税を引き起こす税制として,移転価格税制を解説してきました。今回は,それとは少し異なるのですが,似たようなテーマとして,寄附金(国外関連者に対する寄附金)の問題を解説します。税務担当者の立場では,事業部門の勝手な行動により発生した寄附金認定リスクに対処する機会は多くあると思われ,嫌な意味で身近なテーマだと思います。まずは「寄附金とは何なのか」という点から解説していきます。

1.国外関連者に対する寄附金とは

日本企業が海外に子会社を持っている場合,「国外関連者に対する寄附金」というのは常に注意しておくべき項目と言われますが,これはどういう意味なのでしょうか。

一般に税務上の寄附金とは,いわゆる「寄附金」に限らず,「金銭その他の資産の贈与や経済的な利益の無償の供与」を含む概念です。そして,この「経済的利益の無償供与」には,「タダで何かやってあげること」が含まれます。つまり,日本親会社が海外子会社(国外関連者)に何かをやってあげて,対価を回収していない場合,子会社に対する経済的利益の無償供与(=寄附金)に該当するということです。

例えば,日本企業が海外に新たに製造子会社を設...