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新任社員のための国際税務の仕組みとポイント 第19回 国際税務の使い方①(海外子会社への出向者と出張者をめぐる問題)

 公認会計士・税理士 佐和 周

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ここまでは法人税を中心に,所得税などの税目も確認し,また,日本の税制のほか,海外の税制にも少し触れてきました。そこで,今回を含めて3回(第19回~第21回)は,そのような国際税務に関する知識について,「実際にどのような場面で,どのように使うのか」を再確認していきたいと思います。

ここまで見てきた論点は,実際にはそれぞれを個別に検討すればよいのではなく,様々な要素を一度に考慮しなければなりません。そういった検討の網羅性の確保が,実務的には一番の難しさといえます。

今回は,まず人にまつわる問題を扱います。海外出向・出張という括りで,「各論点をどのような組み合わせで検討するのか」という視点で,これまで見てきた知識を再確認しつつ,新たな知識も少しだけ確認したいと思います。

1.海外子会社への出向者について考える

日本企業が海外子会社を設立した場合,そのマネジメントや従業員をすべて現地で採用することは稀で,多くの場合,日本親会社から従業員を出向させます。また,海外企業を買収して子会社化した場合でも,自社の従業員を出向者として派遣することが多いと思われます。

このような海外子会社への出向者の派遣について,税務担当者はどのようなことを考えればよいでしょうか? 本連載ではもはや恒例ですが,まずは日本の税制と海...