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我が国初の「過少資本税制課税処分事件」東京高裁判決の検討

 弁護士・ニューヨーク州弁護士 太田 洋

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一 はじめに

2020年9月3日,東京地方裁判所は,公刊されたものとしては我が国初めての過少資本税制に基づく課税処分事件につき,納税者全面敗訴の判決を下した(東京地判令和2年9月3日判例時報2473号18頁。以下「原判決」という) 。これに対して納税者側が控訴したが,本年(2021年)7月7日,東京高等裁判所(以下「東京高裁」という)は,原判決の判示を一部修正した他は,概ね原判決の内容を是認し,控訴棄却(納税者全面敗訴)の判決を下した(東京高判令和3年7月7日公刊物未登載 。以下「本判決」という)。

租税特別措置法(以下「措法」という)66条の5が定める過少資本税制は,平成4年度税制改正によって我が国に導入されたが,上述のとおり,過少資本税制の適用が問題となった裁判例は,公刊されたものは全く見当たらず,その意味で,本判決は実務上重要な意義を有すると考えられる(ちなみに,国税不服審判所の裁決例としても,わずかに,日本と甲国との租税条約における特殊関連企業条項が我が国の過少資本税制の適用を制限するか否かが争われた,平成22年12月8日東裁(法)平22--118〔結論消極〕が,国税不服審判所の裁決...