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先どり先よみ デジタル課税 第10回 デジタル課税導入に伴う影響の検討

税理士法人山田&パートナーズ 国際部 部門長/公認会計士・税理士 森口 直樹

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はじめに

デジタル課税とは,「経済のデジタル化に対応するための新しい国際課税のルール」をいいます。経済のデジタル化の進展により,大きく以下の2つの課税上の問題が生じます。

  • ① 物理的な拠点なしに世界中で多くの利益を獲得する多国籍企業に対して物理的な拠点のない市場国が課税できないという問題
  •   →物理的な拠点のない市場国に新たな課税権を配分する等のルールで解決
  • ② 他国への移転が容易なデータ等の無形資産が大きな収益を生み出すようになったことによる軽課税国への利益移転等の「多国籍企業による租税回避行為(いわゆる,BEPS)」の問題
  •   →実効税率が最低税率(15%)以下の場合,最低税率まで課税する等のルールで解決
  • 上記①のルールを第1の柱,②のルールを第2の柱と言います。

    前回 までデジタル課税の内容についてお話してきました。今回は,今現在判明している情報から,第1の柱の「物理的な拠点のない市場国に新たな課税権を配分するルール」と第2の柱の「実効税率が最低税率(15%)以下の場合,最低税率まで課税するルール」がどのような影響を与えるのかについて検討します。

    本原稿は2021年11月30日時点でOECDから公...