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TP Controversy Report〈53〉 切出損益の計算

EY税理士法人  竹内 茂樹
EY税理士法人  大森 紘一

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国外関連取引に関する税務調査では,切出損益の計算・提出が求められる場面が多く存在します。本稿では,それら背景・目的,参考ルール等についてまとめました。切出損益は単に計算作業にとどまらず,「移転価格上の取引単位」といった調査上の重要ポイントとも関連しますので,そういった点についても触れています。

1 切出損益計算の必要性

(1)「所得移転の蓋然性」の判断

「独立企業間価格」がきわめて不明確な概念であることは,金子宏名誉教授が「納税者の法的安定性と予測可能性を害される危険がたえずあることを意味する」 としていることからもわかります。移転価格の事前確認制度が生まれたのもこのような背景によるところが大です。

そのため,課税当局が実際に措置法66条の4を用いて移転価格調査を行うにしても,納税者は極めて不安定な状況に置かれることから,措置法66条の4を発動するための大前提として「所得移転の蓋然性2があるか否か確認する」という実務が行われてきています。このことは,例えば,国税庁移転価格事務運営要領3-1にも表れていますが,その(3)で課税当局からは切出損益の作成が求められることになります。ここでは,検討対象...