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NEW ケース・スタディ 外国の資産保有会社を通じて国内事業に投資をする個人に対する,我が国の外国子会社合算税制の適用

 公認会計士・税理士 赤塚 孝江

( 105頁)

設例

私は2017年に手元の1,000万円を投じて日本で起業し,オンライン・プラットフォーム事業を行う内国法人A社を経営しております。起業の翌年にはシンガポール,台湾,ベトナムにA社の子会社を相次いで設立し,私自身もシンガポールに移住して,それ以降シンガポールと日本を行き来しながらA社の経営を行っております。移住当時はA社の企業価値も当初の投資額程度のものでしたが,移住後現在までの間に業績もかなり伸びてきました。ただ,私はA社ビジネスを長期的に行うつもりはなく,将来売却により創業者利益を確保した後は,それを原資にして別の事業投資を行っていくつもりです。そのため,シンガポールのコンサルタントからは,シンガポールに自身の資産保有会社を設立して,A社株式の保有をはじめ将来の事業投資もその資産保有会社を通じて行うことを薦められています。海外子会社3社はまだ規模が小さく,かつ3社とも日常業務のほとんどを従業員に任せられる規模であるため,私の業務時間の多くは依然として日本のA社業務に費やされており,収入もほとんどがA社からの役員報酬です。私には扶養家族として専業主婦の妻と子供がおりますが,妻は両親の...