※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] 参考資料 「令和4年度税制改正大綱(抄)」 (令和3年12月10日 自由民主党/公明党)

( 117頁)

第一 令和4年度税制改正の基本的考え方

1.~2. (省略)

3.国際課税制度の見直し(大綱P.11~12)

経済のグローバル化が進展し,デジタル技術が経済活動の隅々まで浸透する中,モノを中心とした時代に形成された国際課税原則(「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)なければ課税なし」等)が適切に機能せず,市場国で公平な課税を行えないといった問題が顕在化している。

また,過度な法人税の引下げ競争により各国の法人税収基盤が弱体化するとともに,企業間の公平な競争条件が阻害されるといった状況が生じている。

こうした国際課税上の課題への対応は喫緊の課題であるとの認識のもと,本年10月,OECD/G20「BEPS(注)包摂的枠組み」において,国際的な合意がまとめられた。本国際合意は,税制の不確実性をもたらす一国主義的な課税措置の拡散を防止する観点から,100年来続いてきた国際課税原則を見直し,市場国に新たな課税権を配分するものである。加えて,グローバル・ミニマム課税の導入は,法人税の引下げ競争に歯止めをかけるとともに,わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものである。わが国は,BEPSプロジェクトの立上げ時から,国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところであり,本国際合意を強く歓迎する。

(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転

今後,本国際合意の実施に向け,多国間条約の策定・批准や,国内法の改正が必要となる。制度の詳細化に向けた国際的な議論に引き続き積極的に貢献するとともに,国際合意に則った法制度の整備を進める。その際,わが国企業等への過度な負担とならないように既存制度との関係などにも配慮しつつ,国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。

国際的な租税回避や脱税への対応については,引き続き,国際的な議論や租税回避の態様等を踏まえ必要な見直しを迅速に行っていく。また,コロナ後において見込まれる国境を越えたビジネスや人の往来の再拡大を踏まえ,非居住者の給与課税のあり方について,今後検討を行っていく。あわせて,国際課税制度が大きな変革を迎える中,国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう,国税当局の体制強化を行うものとする。

4.~5. (省略)

第二 令和4年度税制改正の具体的内容(P.16~)

一 個人所得課税(省略)

二 資産課税(省略)

三 法人課税

1~5(省略)

6 円滑・適正な納税のための環境整備(P.57~59)

(国 税)

(一部省略)

(2)みなし配当の額の計算方法等について,次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。

① 資本の払戻しに係るみなし配当の額の計算の基礎となる払戻等対応資本金額等及び資本金等の額の計算の基礎となる減資資本金額は,その資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とする。

(注)出資等減少分配に係るみなし配当の額の計算及び資本金等の額から減算する金額についても,同様とする。

② 種類株式を発行する法人が資本の払戻しを行った場合におけるみなし配当の額の計算の基礎となる払戻等対応資本金額等及び資本金等の額の計算の基礎となる減資資本金額は,その資本の払戻しに係る各種類資本金額を基礎として計算することとする。

(一部省略)

7~9(省略)

四 消費課税

1 適格請求書等保存方式に係る見直し(P.71~73)

(国 税)

(1)適格請求書発行事業者の登録について,次の見直しを行う。

(一部省略)

③ 特定国外事業者(事務所及び事業所等を国内に有しない国外事業者をいう。)以外の者であって納税管理人を定めなければならないこととされている事業者が適格請求書発行事業者の登録申請の際に納税管理人を定めていない場合には,税務署長はその登録を拒否することができることとし,登録を受けている当該事業者が納税管理人を定めていない場合には,税務署長はその登録を取り消すことができることとする。

(一部省略)

2 (省略)

3 その他(P.73~76)

(国 税)

(1)外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について,次の見直しを行う。

① 輸出物品販売場において免税で購入することができる非居住者(以下「免税購入対象者」という。)の範囲について,次の見直しを行う。

イ 出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格をもって在留する非居住者については,短期滞在,外交又は公用の在留資格を有する者に限ることとする。

ロ 日本国籍を有する非居住者については,国内に2年以上住所及び居所を有しないことについて,入国の日から起算して6月前の日以後に発行された在留証明又は戸籍の附票の写し(以下「証明書類」という。)により証明された者に限ることとする。

② 上記①ロの者に対して免税販売を行う事業者は,証明書類に記載された情報を購入記録情報として国税庁長官に提供し,又は証明書類の写し若しくは証明書類に係る電磁的記録を保存することとする。

③ 免税購入対象者が行う旅券情報の提供等は,デジタル庁が整備及び管理をする訪日観光客等手続支援システムを用いて行うことができることとする。

④ 免税で購入された物品を輸出しない場合に消費税の即時徴収等を行う場合の税関長の権限について,税関官署の長へ委任できることとする。

⑤ その他所要の措置を講ずる。

(注1)上記(④を除く。)の改正は令和5年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について,上記④の改正は令和4年4月1日以後に行われる即時徴収等について,それぞれ適用する。

(注2)上記の改正に伴い,輸出酒類販売場制度における非居住者の範囲,酒税の免税販売手続及び酒税の即時徴収等に係る税関長の権限等について,所要の措置を講ずる。

(2)~(4)(省略)

(5)消費税の仕入税額控除の要件として保存することとされている輸入許可書等及び輸出免税の要件として保存することとされている輸出許可書等の範囲に,これらの書類に係る電磁的記録を含めることとする。

(6)郵便物を輸入する際に納付する内国消費税について,キャッシュレス納付を可能とするほか,所要の整備を行う。

(7)酒税,たばこ税,揮発油税,石油ガス税及び石油石炭税における輸出免税の適用に当たって必要となる帳簿の記載について,輸出許可書等に係る電磁的記録に基づいて記載できることとする。

(8)~(11)(省略)

(地方税)(省略)

五 国際課税(P.76~82)

1 過大支払利子税制の見直し

(国 税)

対象純支払利子等に係る課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)について,外国法人の法人税の課税対象とされる次に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額についても適用する。

(1)恒久的施設を有する外国法人に係る恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得

(2)恒久的施設を有しない外国法人に係る国内源泉所得

(地方税)

法人住民税及び法人事業税について,対象純支払利子等に係る課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

2 外国子会社合算税制の見直し

(国 税)

特定外国関係会社等の判定における保険委託者特例に関する「一の保険会社等」及び「その一の保険会社等との間に特定資本関係のある保険会社等」によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている外国関係会社である旨の要件について,次の見直しを行う。

(1)上記の「一の保険会社等」について,その範囲に保険会社等に発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている内国法人(保険会社等を除く。以下「判定対象内国法人」という。)で,次に掲げる要件の全てを満たすものを加える。

① 判定対象内国法人が,専ら100%内国法人グループ(判定対象内国法人及びその判定対象内国法人との間に特定資本関係のある内国法人をいう。)によってその発行済株式等の50%超を直接又は間接に保有されている保険業又はこれに関連する事業を主たる事業とする外国関係会社(その判定対象内国法人によってその発行済株式等の全部又は一部を直接又は間接に保有されているものに限る。)の経営管理及びその附帯業務を行っていること。

② 上記①の100%内国法人グループに係る他の内国法人(上記①の外国関係会社の発行済株式等の全部又は一部を直接又は間接に保有するものに限るものとし,保険会社等を除く。(2)において同じ。)が,専らその外国関係会社の経営管理及びその附帯業務を行っていること。

(2)上記の「その一の保険会社等との間に特定資本関係のある保険会社等」について,その範囲に上記(1)①の100%内国法人グループに係る他の内国法人で,専ら上記(1)①の外国関係会社の経営管理及びその附帯業務を行っているものを加える。

(注1)上記の「保険会社等」とは,内国法人で保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に該当するものをいう。

(注2)上記の「特定資本関係」とは,二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係等をいう。

(注3)特定外国関係会社等の判定におけるロイズ特例について,上記と同様の見直しを行う。

(注4)上記の改正は,外国関係会社の令和4年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。

(地方税)

法人住民税及び法人事業税について,外国子会社合算税制の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

3 その他

(国 税)

(1)子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置(子会社株式簿価減額特例)について,次の見直しを行う。

① 適用除外要件(特定支配日利益剰余金額要件)の判定

イ 子法人の対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度(以下「直前事業年度」という。)終了の日の翌日からその対象配当等の額を受けるまでの期間(イにおいて「対象期間」という。)内にその子法人の利益剰余金の額が増加した場合において,対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかがその翌日以後であるときは,直前事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額に期中増加利益剰余金額(その対象期間内に増加したその子法人の利益剰余金の額とその対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に対応して減少したその子法人の利益剰余金の額の合計額をいう。以下同じ。)を加算することができることとする。ただし,次に掲げる金額を証する書類を保存している場合に限る。

(イ)期中増加利益剰余金額

(ロ)特定支配前の期中増加利益剰余金額(特定支配日の属する事業年度開始の日から特定支配日の前日までの期間((ロ)において「特定支配前対象期間」という。)内にその子法人の利益剰余金の額が増加した場合において,その子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額(その基準時が特定支配前対象期間内にあるものに限る。)があるときにおけるその特定支配前対象期間内に増加したその子法人の利益剰余金の額とその特定支配前対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に対応して減少したその子法人の利益剰余金の額の合計額をいう。以下同じ。)

ロ 上記イの適用を受ける場合には,特定支配日前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額に特定支配前の期中増加利益剰余金額を加算する。

② 適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた本制度の回避を防止するための措置(適用回避防止規定)について,次のいずれかに該当する場合には適用しないこととする。

イ 対象配当等の額に係る基準時以前10年以内に子法人との間にその子法人による特定支配関係があった法人(以下「孫法人等」という。)の全てがその設立の時からその基準時(その基準時前に特定支配関係を有しなくなった孫法人等にあっては,最後に特定支配関係を有しなくなった時の直前)まで継続してその子法人との間にその子法人による特定支配関係がある法人(イにおいて「継続関係法人」という。)である場合(その子法人又はその孫法人等を合併法人とする合併で,継続関係法人でない法人を被合併法人とするものが行われていた場合等を除く。)

ロ 次のいずれにも該当する場合

(イ)その親法人と孫法人との間に,その孫法人の設立の時からその孫法人から子法人に支払う配当等の額に係る基準時まで継続して親法人による特定支配関係がある場合

(ロ)その基準時以前10年以内にその孫法人との間にその孫法人による特定支配関係があった法人(以下「ひ孫法人等」という。)の全てがその設立の時からその基準時(その基準時前に特定支配関係を有しなくなったひ孫法人等にあっては,最後に特定支配関係を有しなくなった時の直前)まで継続してその孫法人との間にその孫法人による特定支配関係がある法人((ロ)において「継続関係法人」という。)である場合(その孫法人又はそのひ孫法人等を合併法人とする合併で,継続関係法人でない法人を被合併法人とするものが行われていた場合等を除く。)

③ その他所要の措置を講ずる。

(注)上記の改正は,令和2年4月1日以後に開始する事業年度において受ける対象配当等の額について適用する。

(2)グループ通算制度の施行に伴い,同制度における外国税額控除について,次の見直しを行う。

① 税務当局が調査を行った結果,進行事業年度調整措置を適用すべきと認める場合には,通算法人に対し,その調査結果の内容(進行事業年度調整措置を適用すべきと認めた金額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

② 上記①の説明が行われた日の属する事業年度の期限内申告書に添付された書類に進行事業年度調整措置を適用した金額(税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額)として記載された金額等がその説明の内容と異なる場合には,その事業年度に係る税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置を不適用とする。

③ 税額控除額等(税額控除額,税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額をいう。以下同じ。)に係る固定措置が不適用とされた事業年度について,その不適用とされたことに伴い修正申告書の提出又は更正が行われた場合には,原則として,その修正申告書又はその更正に係る更正通知書に税額控除額等として記載された金額をもって本固定措置を再度適用する。

④ その他所要の措置を講ずる。

(3)金融商品取引法に規定する市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引の決済により生ずる所得は,所得税法及び法人税法に規定する国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に含まれないことを法令上明確化する。

(注)外国税額控除における国外源泉所得である「国外資産の運用・保有所得」についても同様とする。

(4)非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置の適用期限を2年延長する。

(5)令和3年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例は,適用期限の到来をもって廃止する。

(6)非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度等について,次の措置を講ずる。

① 報告金融機関等の範囲に,海外投資家等特例業務届出者及び届出をして移行期間特例業務を行う者等を加える。

② 報告金融機関等の報告事項の提供方法から,磁気テープを提出する方法を除外する。

(注)上場株式等の配当等に係る租税条約等の適用手続におけるその配当等の支払の取扱者のその支払を受ける者等に関する事項の提供方法についても同様とする。

(7)租税条約等の相手国等の税務当局との情報交換において,その租税条約等に定めるところにより,その相手国等の法令の規定により収集された個人番号を受領することができること及びその手続を法令上明確化する。

(地方税)

(1)グループ通算制度の施行に伴い,同制度における法人住民税の外国税額控除について,次の見直しを行う。

① 国税において,税務当局が調査を行った結果,進行事業年度調整措置を適用すべきと認めた内容と異なる申告が行われた場合にその事業年度に係る税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置が不適用とされるときには,その事業年度に係る法人住民税の税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置を不適用とする。

② 法人住民税の税額控除額等(税額控除額,税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額をいう。以下同じ。)に係る固定措置が不適用とされた事業年度について,その不適用とされたことに伴い修正申告書の提出又は更正が行われた場合には,原則として,その修正申告書に税額控除額等として記載された金額又はその更正に係る税額控除額等とされた金額をもって本固定措置を再度適用する。

③ その他所要の措置を講ずる。

(2)法人事業税において損金算入の対象となる外国法人税額等の範囲の明確化

外国税額控除の適用を受ける法人に係る法人事業税の所得等の計算上損金の額に算入される外国法人税額等には,外国法人税を課されたことを証する書類を保存していない等の理由により法人税額から控除できない金額等は含まれないことを明確化する。

(3)令和3年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例は,適用期限の到来をもって廃止する。

(4)個人住民税,法人住民税及び事業税について,国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備

1~2 (省略)

3 財産債務調書制度等の見直し(P.86~87)

(国 税)

財産債務調書制度等について,次の見直しを行う。

(1)財産債務調書の提出義務者の見直し

現行の財産債務調書の提出義務者のほか,その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者を提出義務者とする。

(注)上記の改正は,令和5年分以後の財産債務調書について適用する。

(2)財産債務調書等の提出期限の見直し

財産債務調書の提出期限について,その年の翌年の6月30日(現行:その年の翌年の3月15日)とする(国外財産調書についても同様とする。)。

(注)上記の改正は,令和5年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。

(3)提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し

提出期限後に財産債務調書が提出された場合において,その提出が,調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは,その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について,その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとする(国外財産調書についても同様とする。)。

(注)上記の改正は,財産債務調書又は国外財産調書が令和6年1月1日以後に提出される場合について適用する。

(4)財産債務調書等の記載事項の見直し

財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げるほか,財産債務調書及び国外財産調書の記載事項について運用上の見直しを行う。

(注)上記の改正は,令和5年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。

(5)その他所要の措置を講ずる。

4~5 (省略)

七 関税(省略)

第三 検討事項(省略)