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[全文公開] Amount B(利益B)

佐和公認会計士事務所  佐和 周

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本連載は,国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが,今回も 前回 に引き続き,デジタル課税等に係る新しい国際課税ルールに関連する用語です。

まず, Amount B は,「利益B」と訳されます。これは, Amount A (利益A)と同様,第1の柱( Pillar One )に関連する用語です。また, amount 自体は「額」( a quantity of money )という意味に過ぎませんが,これが「利益」と訳されるのは, Amount B が市場国に保証される一定の「利益」を意味するからです。

すなわち, Amount B (利益B)とは,端的には,基本的なマーケティング及び販売活動( baseline marketing and distribution activities )に対する利益のことです。言い換えると,市場国におけるそのような基礎的な活動に関して,市場国に一定の利益を保証するルールということになります。

利益Bは,利益Aと同じく第1の柱に含まれており,利益Aと並列で解説されますが,従来からの「独立企業原則」の考え方に基づくものという意味で,特別なものではありません。すなわち,利益Bの位置付けとしては,新興国等の執行能力の低い国( low capacity countries )における移転価格の議論を簡素化するため,利益配分自体を簡素化するルールと整理できます。

編集部より

佐和先生のWebセミナー「国際税務基礎講座(全20回)」は,国際税務データベースでご覧いただけます(P・R会員)。本誌連載「新任社員のための国際税務の仕組みとポイント」と併せてご利用ください。

(1)国際税務の問題が発生する基本構造

(2)租税条約

(3)外国税額控除制度①

(4)外国税額控除制度②

(5)恒久的施設(PE)

(6)外国子会社配当益金不算入制度

(7)移転価格税制①

(8)移転価格税制②

(9)移転価格税制③

(10)国外関連者に対する寄附金

(11)タックス・ヘイブン対策税制①

(12)タックス・ヘイブン対策税制②

(13)過大支払利子税制・過少資本税制

(14)国際税務における個人の所得税

(15)海外取引における源泉所得税

(16)海外取引における消費税

(17)海外出向者・出張者に係る国際税務

(18)海外子会社からの資金還流

(19)海外子会社の清算・売却

(20)国際税務に係る税務調査