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国際税務研究 タックス・ヘイブン子会社の繰越欠損金の繰越期間の徒過回避を目的とするグループ内取引

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 130頁)

設例

 製造業を営む日本法人A社は,世界各国に製造子会社,販売子会社等の外国関係会社を多数擁しているが,そのうちのいくつかは,日本の税制上のタックス・ヘイブン子会社に該当し,A社において合算課税の対象となっている。

これらのタックス・ヘイブン子会社のうちの1つであるB国法人のC社は,現地において独立した企業実体を有する事業法人として活動しているが,所与の要件に該当するため,タックス・ヘイブン税制上は「対象外国関係会社」に該当し,かつ,B国が,特段の事情がない限り,各事業年度の法人実効税率が20%未満の軽課税国であるところから,黒字の事業年度であれば当然に合算課税が適用されることになる筈のものであるにもかかわらず,ここ数年来,諸般の事情により赤字続きで,合算課税は免れているものの,容易に業績回復の兆しが見えない状況になっている。

このため,この状況がさらに長引けば,仮にその後さいわいに黒字転換したとしても,本来であれば合算課税に当たって繰越控除できる筈の前7年間の繰越欠損金の全部又はその大半がその繰越期間を徒過して控除不能に陥ることが予想されることから,これを回避するための方策を種々検討した...