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税務部・経理部も知っておくべき 関税・特恵税率活用の基本 第1回 基本的な関税の仕組み,課税価格の決定メカニズム

公益財団法人日本関税協会 調査研究部長 松本 敬
公益財団法人日本関税協会 教育・セミナー部長 長谷川 実也

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1.はじめに

2022年1月1日,「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」(以下「RCEP」という。)が発効しました。我が国はこれまで24か国・地域の間で21の経済連携協定等(以下「EPA」という。)を締結しており,RCEPを含め20のEPAが既に発効し,我が国の貿易相手国の約8割がEPAによりカバーされています

RCEPは,世界のGDP,貿易総額及び人口の約3割,我が国の貿易総額のうち約5割を占める非常に規模の大きなEPAであり,税の観点からも我が国企業は,RCEPを活用することにより大きなメリットを享受できます。我が国企業がRCEP加盟国から貨物を輸入する際,日本税関に関税(有税品)と消費税等を納付したのち国内に引き取ることとなります。また,貨物をRCEP加盟国に輸出する際は,当該輸出相手国において輸入関税と消費税やVAT(付加価値税)を納付する必要があります。この輸出入の際に納付する関税額がRCEPの特恵税率を活用することにより大きく減少します。

財務省,経済産業省及び農林水産省が共同して試算した,関税収入等の減少額が公表されています。試算によると,RCEP発効による我が国の関税...