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移転価格税制についての素朴な疑問⑥ 最適方法はどのように選定されるか(1)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 64頁)

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

2 本稿で取り扱う事項

Ⅱ 独立企業間価格の算定方法

1 算定方法の概要

2 算定方法の分類

Ⅲ 最適方法の選定

1 基本三法について

2 DCF法の劣後

3 簡易な算定方法

4 利益分割法とTNMMの使い分け

Ⅳ TNMMの種類と特徴

1 TNMMの種類

2 TNMMの特徴

Ⅴ TNMMの適用例の検討

1 問題の所在

2 移転価格参考事例集の検討

3 まとめ

Ⅵ まとめ

1 最適方法の選定の手順

2 日系の多国籍企業グループへの当てはめ

3 まとめ

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

日本の移転価格税制は,法人の「国外関連取引に係る対価の額」を「独立企業間価格」に引き直して,日本での課税所得を再計算し課税する制度である 。同制度を日系の多国籍企業グループに当てはめると,典型的には,内国法人(親会社)と外国子会社間の「国外関連取引に係る対価の額」と当該取引に係る「独立企業間価格」が異なる場合で,しかも,親会社の課税所得が減少する場合に適用される。

上記の「国外関連取引に係る対価の額」とは,親会社と外国子会社間の実際の取引価格を意味する。したがって,同税制が発動されるかどうかは,結局のところ,「独立企業間価格」をどのように算定するかにかかっている。この「独立企業間価格」につき,租税特別措置法は,算定方法を法定した上で,その中から最も適切な方法を選定することを要請している。

独立企業間価格の算定に関する論点は極め...