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[全文公開] Undertaxed Payment Rule(UTPR)(軽課税支払ルール)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は,国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが,今回も 前回 に引き続き,デジタル課税等に係る新しい国際課税ルールに関連する用語です。

UTPR (軽課税支払ルール)とは,軽課税国の関連企業への支払いを行っている子会社等に対して,その支払会社の国で最低税率まで(損金算入否認等の形で)課税するというルールをいいます。

前提として, UTPR は第2の柱( Pillar Two )に関連する用語です。第2の柱は,端的には,国際的に合意された最低税率(15%)を導入するものであり,その具体的な枠組みの1つとして, GloBE ルール( Global Anti-Base Erosion rules )と呼ばれる「国内法上の措置」があります。 前回IIRIncome Inclusion Rule 。所得合算ルール)と同じく, UTPR もこの GloBE ルールの構成要素と整理できます。

UTPR のうち, UT 部分,すなわち, undertaxed という表現自体はあまり一般的なものではないかもしれません。ここでは「課税が過少な」という意味であり,受取側の関連企業が軽課税国なので,支払い( payment )がundertaxedの状態になってしまうということです。ちなみに,反意語の overtaxed (課税が過大な)のほうは,もう少しよく見かける単語ではないかと思います。

なお, 前回IIR との関係でいうと,IIRは子会社等に係る租税負担割合的なものが最低税率(15%)未満である場合に,親会社等の国で最低税率まで合算課税を行う仕組みでした。今回の UTPR は,親会社等にIIRが適用されない場合に適用されるものであり,その意味で, IIR を補完する制度と位置付けられます。