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中国子会社からの利益還元にあたっての留意点(上)

Ernst & Young(China)Advisory Limited  坂出 加奈
EY税理士法人  西 康之

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新型コロナウィルスのパンデミック直後となる2020年度,中国の全国一定規模以上の工業企業 の利益総額は,2019年度よりも,むしろ高くなった。日本やグローバルの移転価格税制の観点から企業グループ全体の利益配分のバランスをとるために,中国子会社から日本本社への利益還元を模索する企業グループが,パンデミック後,一段と増えることが予測される。

一般的に,中国から日本への利益還元のための関連者間取引には,中国子会社から日本本社へのロイヤルティやサービスフィーの支払いが挙げられる。ただし,これらの棚卸資産を伴わない非貿易支出は,中国税務局が特に注目する関連者間取引となる。新規取引の構築や対価の引上げに当たっては,グローバル移転価格ポリシーとの整合性と共に,中国側で損金不算入の指摘を受けて二重課税とならないよう,日中双方で十分な検討が求められる。

また中国には,複数の現地法人を持つ企業グループが多い。中国の単体法人の特定の取引の対価設定だけでは達成が難しい利益水準のバランスも,複数の中国子会社の棚卸資産や役務提供取引,個々のロイヤルティ取引の流れを確認して,企業グループの取引を全面的に把握して整理することで,より選択肢が広がり,日中双方の移転価格リスクの低減につながることがある。

なお,利益配分を変える関連者間取引の新規導入や見直しに当たっては,移転価格税制以外にも,企業グループ全体の事業運営や業績...