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欧州租税回避防止指令(ATAD 3:EU Shell Entities Directive)に関する動向

Meijburg&Co(KPMGオランダ) パートナー Cees van der Helm
 GJPシニアマネージャー 宮本 健一

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1.はじめに

2021年12月22日,欧州委員会は,法人所在地における実体が乏しい法人を利用した租税回避の防止を目的とした欧州指令案を公表した(既に2019年に導入されている欧州租税回避防止指令(Anti-Tax Avoidance Directive,ATAD),及び2020年の租税回避防止指令(ATAD 2)に続くものとして,ATAD 3として表現されている)。

今回の欧州租税回避防止指令案(ATAD 3,本指令案)は,2021年5月18日に発表された「21世紀における法人課税(Business Taxation for the 21st century)」と題して,EU委員会が公表した欧州における税務政策及び計画の実施に関する見解を取り纏めた文書に基づき議論が進められたものである。本議論の中で,EUでのポストコロナにおける経済復興,クロスボーダー投資への障害の除去,公平かつ持続可能な成長に寄与する投資環境を創出することを支援するために,強固で効率的かつ公平な法人課税のフレームワークが計画された。長期的な視点から,EUは管理運営上の負担を軽減し,税務上の障害を取り除き,単一市場における...