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国際税務研究 外国法人の赤字日本支店閉鎖後のゼロ申告の継続と日本子会社株式の譲渡所得課税

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 116頁)

設例

 外国法人であるA社は、3年程前まで ほぼ 10年間にわたり日本国内に恒久的施設(PE)に当たる日本支店を設けて事業活動を行い、青色申告の承認も受けて毎期法人税の確定申告書(青色申告書)を提出していたが、日本支店の事業そのものは毎期大幅な欠損続きで、多額の欠損金が累積し、遂に再建の方途もないまま3年程前に日本における事業から完全に撤退し、日本支店も事実上閉鎖して、いわゆるノンPEの非居住外国法人のまま今日に至っている。

ただし、いずれまた日本支店再開の期待も捨てきれないこともあって、他に申告すべき国内源泉所得が全くないにもかかわらず、A社独自の判断で、支店閉鎖の登記手続きも税務当局に対するPE廃止の届出もしないまま、その後も引続き日本支店名義で毎期確定申告書の提出(ゼロ申告)を続け、青色繰越欠損金の温存を図ってきた。なお、このことについて税務当局からは何らの注意もなく、税務調査もなかった。

2 他方、A社は、日本国内にバブル期前に取得した貸ビルを所有する100%日本子会社B社を有しているが、建物の老朽化と最近のリモートワークの増大によるテナント企業の激減という悪材料が重なり、このところ...