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[全文公開] Effective Tax Rate(ETR)(実効税率)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、デジタル課税等に係る新しい国際課税ルールに関連する用語です。

日本語で「実効税率」というと、税効果会計における一定の算式があり、「事業税などの損金算入効果を調整した後の法人税等の税率」を指します。一方、英語で" effective tax rate "というと、それ自体に明確な定義はなく、単純に「税金を所得(または利益)で除したもの」という意味合いになることが多いと考えられます。

上記の ETREffective Tax Rate )は、第2の柱( Pillar Two )におけるGloBEルール( Global Anti-Base Erosion rules )の文脈で登場する用語です。その文脈における ETR も、単純には「税金÷所得(利益)」で計算されます。しかしながら、GloBEルールのモデル・ルール( Model Rules )において、より詳細な計算式が示されており、具体的には、「国・地域の各構成事業体( Constituent Entity )の調整対象税金( Adjusted Covered Taxes )」を「国・地域の純GloBE所得( Net GloBE Income )」で除して計算することとされています。

分子については、 Adjusted (調整)とあるとおり、各構成事業体の税金費用に様々な調整を行って計算する必要があり、また、分母についても、単なる純所得( net income )ではなく、各構成事業体の純損益に様々な調整を行って計算する必要があります。

なお、上記の算式からもわかるとおり、GloBEルールにおける ETR は、国・地域ごとに計算すべきものであり、事業体ごとに計算すべきものではありません。

この ETR は、GloBEルールにおける最低税率( minimum tax rate )である15%と比較されるべきものです。すなわち、 ETR がこの最低税率を下回ると、GloBEルール、すなわち、 IIR (所得合算ルール: Income Inclusion Rule )などが発動し、課税が生じる可能性があります。