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バーチャル組織の実践課題 第2回 バーチャル組織を活用した海外進出

AsiaWise Group* 税理士 高野 一弘
 弁護士 久保 光太郎
 公認会計士 山﨑 耕平

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1.はじめに

事業の拡張を検討する場合、海外の市場を目指すことは自然な選択肢の一つです。市場調査や実証実験を実施する場合、現地に拠点を作った上で自社の従業員を駐在員として送り込むことが一般的です。

しかし、昨今のビジネス展開のスピードを勘案すると、現地に拠点を設けて、駐在員を送り込んだのでは、事業側のニーズに対応できない場合もあります。管理側が保守的に画一的な対応方法にこだわり続けた場合、事業側は管理側を無視・排除した形で事業を進めかねず、最悪の場合、コンプライアンス違反や重大な税務リスクに繋がりかねません。昨今はデジタルリモート技術の発展を背景に、現地に拠点を作ったり駐在員を送り込んだりせず、外部のリソースも活用した形で市場調査や実証実験を実施する例が増えています。筆者らは、グループ企業の経営・運営上、必要となる要員とその所在地国が一致しないグループ企業管理体制を「バーチャル組織」と呼び、従来型の指揮命令系統に囚われず、場所さらには組織の枠を超えた企業管理形態の考察を行います。

連載第2回となる今回は、企業が「バーチャル組織」を活用して、機動的かつ効果的に海外進出を実施する場合の課題について、ケーススタディの形式を用いて考察します。

2.ケーススタディ① 外部組織を活用した初期的調査

日本法人A社はASEAN進出を企画しています。A社は、これまで米国、中国に進出していますが、それ以外の国・...