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実例で学ぶ 外国人雇用と海外出向者にまつわる税務・給与・社会保険 第142回 海外赴任者の個人所得税の管理方法

EY税理士法人 税理士 藤井 恵

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海外出向者に関する税務問題について日本本社にとって最も関心が高いのが、出向者コストを本社負担した場合にそのコストが日本で寄附金としてみなされるか否か、という点ではないでしょうか。しかし、この問題と同じかそれ以上に重要ながら日本の経営者の関心が非常に薄く、そのリスクすらあまり認識されていないことが多いのが、海外出向者の「赴任先国における個人所得税の申告・納税漏れのリスク」です。

これについては、「仮に申告漏れがあっても見つかることはないだろう」という意見は論外ですが、「出向者の申告は現地法人がきちんと行っているはずだから」、「会計事務所に頼んでいるから」と真剣にとらえておらず、実際に正しく申告・納税が行われたかの確認を本社側で実施していない企業が多いようです。

そこで本稿では、海外赴任者の任地での個人所得税について、海外赴任者の報酬に関しての特徴をご紹介するとともに、どのような管理方法があるのかを紹介するとともに、申告漏れのリスクを減らすために有効な手段を確認していきます。

1.海外赴任者の報酬の特徴

通常、海外赴任者には、日本本社が定めた海外勤務者規程に基づき、海外勤務に伴う様々な手当、福利厚...