※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

3月に公表された「第2の柱 グローバル・ミニマム課税」コメンタリーの重要ポイント(下)

長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 南 繁樹

( 34頁)

第4 実効税率の計算(ETR: Effective Tax Rate)¹

1 実効税率を計算するための分母と分子

GloBEルールは、多国籍企業グループに属する事業体(構成事業体)について最低税率(15%)に至るまで、多国籍企業グループが所在する世界のどこかで課税を行うものである。その最低税率に達しているか否かの基準となるのが「実効税率(ETR: Effective Tax Rate)」である。実効税率の計算は、構成事業体の「税額」(分子)を、構成事業体の税引前利益(分母)で除して計算する。税法に定められている税率を見るだけでは、各国の税法により、特定の所得を課税対象から除外し又は課税を遅らせる場合などの取扱いの違いのため、税負担の軽重を判断することができない。そこで、利益に対する実質的な税負担を測定する概念が必要となる。それが「実効税率」である。

実効税率(ETR)= 税額
税引前利益

2 国別ブレンディング

実効税率の計算は国(jurisdiction2)単位で行う(Jurisdictional Blending。モデル規則5.1.1条)。つまり、実効税率の計算に使用する「税額」(調整対象税額)と「税引前利益」(純GloBE所得)のいずれも、ある国に所在する構成事業体の全てに関する税額と税引前利益のそれぞれを合計し、分子と分母にする。なお、上乗せ税額も一旦は国別に算定するが、具体的に所得合算...