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クロスボーダー事業再編に係る移転価格 第3回 研究開発活動の再配置と移転価格

ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業) パートナー¹ 津田 朗彦

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はじめに

本連載の 第1回 ではクロスボーダー事業再編に係る移転価格の基本的な考え方を、第2回では日本企業が欧州のスタートアップTech企業を買収するモデル事例を使って、移転価格マネジメント上の課題とその重要性を紹介した。この第3回では、国境を越えたグループ間の研究開発活動の再配置について、費用分担契約及び所得相応性基準を中心に、移転価格税制の観点から考えてみたい。

第1回でも触れたように、中国や東南アジア諸国の経済発展を背景に、日本の多国籍企業、特に製造業による国外関連者と水平的分業体制の整備の進展が言われて久しい。水平的分業体制のもとでは、より多くの機能・資産・リスクを国外関連者に担ってもらうことになり、結果的にリスクを伴う調達、製造、販売活動や研究開発活動など、付加価値の高い工程が日本国外でも行われるようになった。また、アジア各国の市場の拡大に伴い、そうした国々の最終消費者と現地国外関連者との間で、直接的な「地産地消」のような形で取引を完結した方が、消費者のニーズを的確に把握し、迅速に製品化に結び付けられ、製品をより効率的に市場に投入できると考えられる。このような傾向は、日本の人口減少や...