※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

ユニバーサルミュージック事件 最高裁判決の分析と検討

西村あさひ法律事務所 弁護士・NY州弁護士 太田 洋
 弁護士 増田 貴都

( 72頁)

一 はじめに

2022年4月21日、最高裁判所は、いわゆるユニバーサルミュージック事件に関して国側の上告を棄却する判決(最一小判令和4年4月21日裁判所ウェブサイト。以下「本判決」という)を下した。

本件では、国際的なグループ組織再編等に伴って合同会社である納税者(原告=被控訴人=被上告人)が負うこととなった借入債務に係る支払利息(以下「本件支払利息」という)について、課税当局が、同族会社に係る一般的行為計算否認規定である 法人税法132条 1項に基づいてその損金算入を否認した課税処分等(過少申告加算税を含む法人税額計約58億3,850万円)の適法性が争われており、第一審 (東京地判令和元年6月27日税務訴訟資料269号順号13286。以下「本件一審判決」という)及び控訴審 (東京高判令和2年6月24日判例時報2500号8頁。以下「本件控訴審判決」という)では、いずれも納税者が全面勝訴していた。その後、本件控訴審判決について国側が上告及び上告受理申立てを行っていたところ、本判決により上告棄却の判断が下され、納税者の全面勝訴が確定した。

本判決は、 法人税法132条 1項に係る「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」との適用要件(以下「不当減少性要件」という)に関して、最高裁が初めて 実質的な、、、、 判断を下したものとして、今後の実務に大きな影響を与えるものと考えられる。そこで、本稿では、事案の概要を確認の上で(下記 )、本判決の概説(後記 )と検討(後記 及び )を通じて、その今後の実務への影響を展望する(後記 )こととしたい。なお、本稿のうち意見にわたる部分は、筆者らの個人的見解に過ぎず、筆者らの所属する法律事務所その他の組織の見解を示すものではないことを、念のため付言しておく。

二 事案の概要

本件では、仏法人A社を頂点とするエンターテイメント事業を主力事業とする多国籍企業...