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国際税務研究 公益法人等に対するタックス・ヘイヴン税制の適用の有無

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 118頁)

設例

 学校法人であるA学園は、いわゆる中高一貫校として著名な私立学校を経営しているが、近年における急激な少子化の進展に伴い、生徒数の減少に歯止めがかからず、ここ数年慢性的な定員割れの状態が続き、特に財政面から見て極めて危機的な経営状態に陥っている。

そこで、このような経営状態から抜け出すための抜本的な方策を検討すべく、外部の有識者の参加を得て、学園の経営委員会のメンバーを中心とする専門委員会を立ち上げて議論を開始しているが、無論その議論の中心テーマになっているのは、学園の財政状態の改善策であり、具体的には、かつての学生寮やセミナーハウスなどの跡地である遊休不動産を、かねてよりその一括買取りを希望している某企業へ売却することより、かなりの額の資金を確保し、その資金の運用により財政面のプライマリー・バランスの長期安定的黒字化を図るとともに、現行の貸付型の奨学金制度を給付型の制度に改めて生徒数の増加の一助とすることとして、まずそのことについて集中的に議論を進めているところである。

2 この学園の財政状態の改善のための具体的方策に関する議論の過程において、専門委員会のメンバーの1人で有能な財務コ...