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BEPS2.0の実施により日本企業が直面する新たな世界

EY税理士法人 会長 角田 伸広
EY税理士法人 シニアマネージャー 梅本 祥弘

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1.BEPS2.0による税務戦略の課題

BEPS2.0における移転価格税制の枠組みは、Pillar 1におけるAmount Aの超過利益の市場国への配分とAmount Bの販売機能等への一定利益の配分にありますが、Amount Aは、独立企業原則の例外としての定式配分方式とも言えるものであり、Amount Bは、独立企業原則のセーフハーバー(マーケティング販売利益セーフハーバー)となっています。

Pillar 1では、企業の裁量の幅を狭め、可能な限り画一的に税負担の配分を行っていきたいとの政策意図が表れており、税務戦略の中で移転価格の重要性を認識するのは、移転価格税制ではなく外国子会社合算税制としてのPillar 2への対応においてではないかと考えられます。

Pillar 2は、新たな外国子会社合算税制の枠組みで、基本的には15%の最低税率を前提に最終親事業体において合算課税されるもので、移転価格税制の枠組みとは異なるものですが、合算課税の対象となるのは、実効税率の低い拠点への利益配分であることから、合算課税を避けていくためには、利益配分を是正するために移転価格上の検討が必要と考えられます。...