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移転価格税制-残余利益分割法に関する新判断- 東京高裁令和4年3月10日判決(下)

長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 南 繁樹

( 98頁)

第3 本判決の意義(総論)-企業活動に沿った移転価格税制の適用を示す模範的判断

本誌2022年8月号 (42巻第8号)74頁以下において、本判決(東京高裁令和4年3月10日判決 )と第一審判決(東京地裁令和2年11月26日判決 )の概要を紹介した。本稿においては、それを踏まえ、本判決の意義を「総論」と「各論」に分けて検討する。なお、筆者は、本件訴訟における納税者の代理人を務めたが、本稿は公刊された判決文に基づき、判決の客観的な分析を意図するものであり、未公開情報を含むものではない。また、意見にわたる部分はすべて筆者個人のものであり、納税者のものでも筆者が属するいかなる組織のものでもない。なお、引用文中の下線及び強調は、ことわりのない限り、筆者によるものである。

1 税はいかにあるべきか -経済実態に適合した課税でなければならないこと

本判決と、その基礎となっている第一審判決について、何より特筆すべ...