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[全文公開] 金子宏先生の訃報に接して

( 125頁)
税理士 川田 剛

「巨星墜つ」。金子宏先生御逝去の報に接し、真っ先に浮かんだのがこの言葉である。

それも道理、金子宏先生は文字通り、わが国の租税法学の最高峰として御活躍してこられた方だからである。

周知のように、金子宏先生は、昭和28年(1953年)に東京大学法学部をご卒業後、助手、助教授を経て、昭和41年(1966年)に教授にご就任、その後、政府税制調査会委員、日本税理士会連合会顧問、国際租税協会(IFA)日本支部長をはじめ、数々の重要な公職を長期にわたり、務めてこられた。

このような社会的貢献が評価され、平成30年(2018年)には租税法の分野で初めてとなる文化勲章受章の栄に浴しておられる。

若干、私ごとになるが、今から約半世紀ほど前のサンフランシスコ在勤時に、当時、在外研究でUCバークレーに滞在しておられた金子先生をわが家にお迎えしたことがあった。

そのころ、車で4時間ほどの保養地(タホ湖)に家族で旅行した際に、金子先生にご一緒していただいた。車中でわが家のベビーギャングのお相手をしていただいたことが昨日のように思い出される。

その後も、国税庁在勤時及び退職後を通じ、租税法学会、租税判例研究会、日本租税研究協会、IFAなどの公的な場だけでなく、社会人大学院学生の論文指導のお手伝いなど、私的な面を通じても種々御指導をいただいた。

これまで金子先生から賜った数々の御教訓を胸に、金子宏先生のご冥福を謹んでお祈りしたい。

川田 剛

金子宏先生のご略歴

1953年東京大学法学部卒業。1966年から同大教授、名誉教授。その間、所得税・法人税の基礎をなす所得概念の研究に従事、課税要件の理論的解明を研究の中心にすることで、租税法を独立の学問分野として確立。政府税制調査会委員など数多くの公職も歴任。2018年文化勲章受章。