バーチャル組織の実践課題 第5回 バーチャル組織を活用したグローバル人材管理/人材登用
AsiaWise会計事務所 税理士 高野 一弘
AsiaWise会計事務所 公認会計士 山﨑 耕平
AsiaWise会計事務所 弁護士 久保 光太郎
1.はじめに
事業活動が国際化した現在、限られた経営資源、特に人的資源については、グループ内で有効に活用することが強く求められています。少子化、日本市場の相対的位置付けの低下などさまざまな要因を勘案すると海外拠点も含めて、日本人を中心として事業展開を行うというモデルをそのまま継続させることは困難となりつつある中、実際、経営層からは、海外の有能な人材を国内外において登用することを具体的に検討することを求められることも多くなっているのではないでしょうか。企業のグローバル人材プールを管理し、人材の配置を適正化することは、限られたグループ資産の有効、かつ効率的な利用のために必須な施策となってきています。
筆者らは、グループ企業の経営・運営上、必要となる要員とその所在地国が一致しないグループ企業管理体制を「バーチャル組織」と呼び、従来型の指揮命令系統に囚われず、場所、さらには組織の枠を超えた企業管理形態の考察を行います。
連載第5回となる今回は、企業がグローバル人材プールを管理、運用するためのバーチャル人事組織を設置する際の留意点などをケーススタディの形で考察します。
2.ケーススタディ① グローバル人材プールを管理する人事部門の設置
日本法人A社は、グローバルな人材プールの作成、プール人材の最適配置を行う統括部署として、グローバル人材管理部門を新たに設置することとしました。同部門は、日本本社の組織と...