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国際税務研究 配当請求権等のないタックス・ヘイブン子会社株式のM&Aによる売却に係る課税関係

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 94頁)

設例

 日本法人であるA社は、B国法人であるC社の100%子会社であるが、数年前に、同じくC社の100%子会社であった日本法人D社を適格合併により吸収合併して現在に至っている。

この合併によりD社から引継ぎを受けた資産の中にタックス・ヘイブンであるE国の法人で、実質的にC社の完全支配管理の下でその導管となっているペーパー・カンパニーF社の普通株式でD社名義となっているもの(持株割合25%強)があり、A社では、これをそのままD社における合併直前の帳簿価額により受入記帳している。ただし、タックス・ヘイブン国の法人の例に洩れず、F社の資本金は1,000ドルとごくノミナルなもので、A社がD社から合併引継ぎを受けたF社株式の帳簿価額もわずか3万円ちょっと(外貨建の額面金額で250ドル)の少額なものである上、一応普通株式として議決権はあるものの、C社主導の株主間契約で、F社で生じた剰余金についての配当請求権は全てC社に帰属し、D社には資本金として払込んだ250ドルを上限とする金額がF社の解散時に払い戻されるだけということになっていて、合併によりF社株式を引き継いだA社にとっても、この株主間契約はその...