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[全文公開] 国際税務の英単語 incidental benefit(付随的便益)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、移転価格税制のうち金融取引に関係する用語です。

2022年6月に改正された移転価格事務運営要領では、金融取引( financial transactions )に関する取扱いが明確化され、 前回 お伝えしたとおり、金銭の貸借取引について、信用格付( credit rating )等の使用が認められることが明記されています。

信用格付等について検討する際に注意が必要なのが「付随的便益」( incidental benefit )という概念です。その意味合いとしては、取引の当事者が企業グループに属している事実のみを理由とした付随的な便益ということですが、これだけでは何のことかわかりません。

incidental benefit の構成を見ると、 incidental は文字どおり「付随的な」という意味です。税務の世界でも比較的よく見かける単語であり、「より重要なもの( something of greater importance )が別にあり、それに関係している」とニュアンスで捉えるとよいと思います。 benefit のほうは文字どおりの意味ですね。

incidental benefit については、まずは「借手(例えば、海外子会社などの国外関連者)が企業グループに属している事実」があります。そして、それに「付随」して、高い信用格付等が与えられ、海外子会社単独での借入れよりも低利での借入れが可能となれば、それが「便益」ということです。そのため、 group supportimplicit support 等の表現も同じようなニュアンスで使えると思います(「付随的便益」という日本語には対応しませんが)。

なお、改正後の移転価格事務運営要領では、付随的便益自体に対価が発生するものではないとされているため、信用格付等をベースに信用力の比較可能性を判断する場合には、当事者単独の信用格付等ではなく、「付随的便益を加味した結果としての(つまり、相対的に引き上げられて高くなった)信用格付等」を基礎として判断することになります。