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外貨建取引・為替ヘッジの会計&税務対応のポイント、留意点

 公認会計士・税理士 佐和 周

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はじめに

外貨建取引や外貨建資産・負債の換算については、平成11年に外貨建取引等会計処理基準に大きな改正があり、平成12年度税制改正において法人税もそれに合わせる形の改正が行われました。一方で、近年は特に大きな改正もないため、企業においては、過去の実務がそのまま引き継がれているのが実情ではないでしょうか。しかしながら、自社の経理処理を見返してみると、必ずしも会計基準や法人税法に沿った処理が行われていないケースもあるかもしれません。

2023年3月期決算においては、金利差の拡大を背景とする急速な円安の進行やその後の円高への揺り戻し等の大きな為替変動があったため(特に対米ドル)、その影響を適切に自社の利益や課税所得計算に反映させる必要があります。また、このような時期には、後述する15%ルールの適用可否など、税務上の有利・不利の検討もより重要になります。

付随する論点として、為替予約などの為替リスクをヘッジするための取引については、会計上のヘッジ会計の適用要件の充足をもって、税務上も同様にヘッジ会計を適用しているのが一般的と思われます。しかしながら、ヘッジ会計の適用要件には、会計と税務で微妙な差異があり、近年の税務調査においては、税務上のヘッジ会計の適用要件の充足状況が問題になるケースもあります。

本稿では、このような外貨建取引や外貨建資産・負債の換算、また為替リスクのヘッジ取引の取扱いについて解説します。当該分野は会計処理が複雑になることが多く(例えば、外貨建有価証券の換算など)、税務調整の前提となる会計処理自体の理解が難しい面があるため、本稿では、まず会計上の取扱いを解説し、そのうえで税務上の取扱いを解説する形をとります。

Ⅰ 外貨建取引の換算方法

外貨建取引の円換算は何ら複雑なものではなく、通常は月単位などで設定している社内レートで換算を行うだけです。以下では、会計上及び税務上の外貨建...