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国際税務研究 国外のPE課税が大幅に遡及増額された場合の対応

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 120頁)

設例

 加工食品メーカーである日本法人A社は、日本国内の本社工場や直営販売店のほか、世界各国のいくつかにも支店や直営の販売店、製造子会社等を設けて、手広く自社ブランドの加工食品の製造販売業を営んでいるが、これまでは業績もかなり堅調に推移していたところ、最近は新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ問題に伴う食品原材料の品不足、燃料費の高騰などの世界的な悪材料が重なって、ここ数年、A社も、単体ベースはもとより、連結ベースでもかなりの赤字状態に陥っている。

 そんな状況の中で、A社の中核であるB国の現地支店が密かに穀物相場に手を出して、これによりここ5年程にわたりかなり多額の利益を出し、しかもこれをすべてA社の本社にも報告しないで支店限りの簿外にするという不正経理を続け、むろん税務申告からも除外していたことが最近の現地の税務調査により発覚し、この度当該B国支店に対し、既往5年度分の支店申告について遡及して課税が行われ、合わせて重加算税に相当するペナルティも課されるという最悪の事態が発生した。

これに伴い、A社の本社としての決算及び税務申告についても相応の修正手続きを行うことが急遽必要にな...