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移転価格税制についての素朴な疑問⑲ 無形資産取引について何に留意すべきか(1)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 57頁)

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

2 本稿の対象

Ⅱ 令和元(2019)年度税制改正とその背景

1 BEPSプロジェクトと無形資産

2 令和元(2019)年度税制改正の概要

Ⅲ 無形資産の定義

1 国内税法とOECD移転価格

ガイドラインとの異同

2 無形資産の意義と種類

3 無形資産に含まれないもの

4 まとめ

Ⅳ DEMPEと独立企業間対価の支払

1 DEMPEの導入

2 国内税法の考え方

3 まとめ

Ⅴ 日系多国籍企業と無形資産取引

1 日系の多国籍企業の実態

2 ライセンス取引

3 研究開発委託取引

4 譲渡取引

5 管理委託取引

Ⅵ まとめ

1 本稿のまとめ

2 今後のテーマ

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

OECD移転価格ガイドラインのパラグラフ9.55は、事業再編の文脈において、「無形資産又は無形資産に係る権利の移転は、それらの特定と評価の双方面で困難な問題を生じさせる。」と述べている。このように無形資産の概念が広範かつ曖昧である上、無形資産の適正な評価が困難であるため、無形資産に関連する移転価格税制上の問題は一般に難解である。しかも、無形資産に係る取引は、移転に限られず、多様な形態が考えられるので、取引形態に応じて考慮すべき点も...