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租税条約の配当課税条項につき解釈変更

税理士  秋元 秀仁

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はじめに

東京高等裁判所は令和5年2月16日、外国法人(ルクセンブルク)が支払いを受けたみなし配当に係る税率が、租税条約の適用により限度税率の5%になるか否か等を巡って争われた事件について、一審の東京地方裁判所で敗訴していた国側の控訴を棄却しました。

国税庁は判決を踏まえ、3月30日、「租税条約における『利得の分配に係る事業年度の終了の日』の取扱いについて」を公表しました。本稿では、株式保有期間要件の解釈変更の及ぶ範囲と還付請求の留意点等について紹介します。

(編集部より/詳しくは「租税事件の論点からアプローチする実務国際課税」であらためて取り上げていただきます。)

Ⅰ 事案の概要

【取引関係図】

 ルクセンブルクに本店を有する外国法人X(原告・被控訴人)は、平成26年4月29日に我が国に本店を有するA社及びB社(共に10月決算、以下これらを合わせて「本件各子会社」という。)の全株式を取得し、完全子会社化した。そして、Xは、本件各子会社の株式を同子会社の事業年度終了の日(H26.10.31)まで継続保有していた。

本件各子会社は、同年8月1日にそれぞれ他の内国法人に特定の事業を承継させるため、分割...