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[全文公開] 国際税務の英単語 comparability adjustments(差異調整)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、移転価格税制に関係する一般的な用語です。

移転価格税制では、独立企業間価格( ALP:armʼs length price )の算定にあたり、国外関連取引( controlled transaction )と比較対象取引( comparable transaction )との差異について調整を行うことがあります。これを差異調整と呼びますが、移転価格税制における「差異調整」は、 comparability adjustments と訳すことができます。

会計・税務分野の英語に慣れておられる方は、「差異」と聞くと、 difference という単語が思い浮かぶと思います。もちろん、それを使って「差異調整」を表現することも可能で、 adjustments for differencesadjustments to eliminate differences などと言っておけば、その意味合いはちゃんと通じそうです。

しかしながら、そもそも差異調整は、国外関連取引と比較対象取引との比較可能性( degree of comparability )を高めるためのものなので、上記では comparability という単語を使って、 comparability adjustments と表現しています。

なお、「~に関する差異調整」と言いたいときには、 for を付けて、 comparability adjustments for ~ と表現できます。例えば、販売数量(に応じた値引き等)に関する差異調整であれば、 comparability adjustments for differences in sales volume のように表現できます。また、文脈から「差異調整」であることが明らかであれば、あえて for を使わずに、 working capital adjustments (運転資本に係る差異調整)のような表現も可能です。

ちなみに、1つ注意を要するのが transfer pricing adjustment という表現です。上記のとおり、 adjustment はよく「調整」という意味で使われるので、 transfer pricing adjustment も「差異調整」などと誤解されがちですが、これは「移転価格課税」という訳が最も近いと思われます。つまり、この場合の adjustment は、移転価格税制に関して、税務当局が行う調整( adjustment made by tax authorities )という意味合いだということです。