東南アジア・オセアニア地域 定点観測 主要7ヶ国における最近の税制改正と執行状況〈下〉 ~2023年度版~
PwC税理士法人 パートナー 神保 真人
PwCインドネシア パートナー 菅原 竜二
Ⅳ シンガポール
PwCシンガポール シニアマネージャー 北村 勝信
シニアマネージャー 山本 尚紀 /マネージャー 海谷 亮介
1.はじめに:シンガポールの経済環境と日系企業の課題
シンガポールの2022年通年の実質GDP成長率は、3.8%と前年2021年の7.6%に比較して鈍化した。シンガポール貿易産業省(Ministry of Trade and Industry:MTI)によれば、2023年のGDP成長率見通しについては、米国やユーロ圏の成長率の鈍化による外需見通しの弱まり、世界的な金融引き締めの懸念やウクライナ情勢・主要国間の地政学的緊張の懸念を踏まえ0.5%~2.5%とされている。税収に関しては、2023年度予算案におけるFY2022の税収見込額は819億シンガポールドル、FY2023の税収目標は882億シンガポールドルとされている。
物価に関しては、幅広い品目で価格が上昇しており、シンガポール進出企業にとって賃料・人件費を含むオペレーションコストの増加が事業上の課題となっている。しかし、シンガポール通貨庁(Monetary Authority of Singapore:MAS)によれ...