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提言「税務戦略の成果の定量化」に関する考察

日東電工株式会社 経理財務本部 フェロー 渡會 直也

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編集部より  課税リスク対策に関する職業会計人や弁護士等の専門家による実務解説は数多く存在しますが、経営戦略の一角である「税務戦略」の進め方や判断に関するものは少ないようです。そうした観点から、表題のテーマについて、長年にわたり事業会社で税務を担当されたご経験をお持ちの日東電工株式会社 前税務部長 渡會直也氏にご寄稿いただきました。

(企業懇話会会員サイトの「税研BOOKS」に、渡會氏の「実録・経理マンヒストリー『ゼロからの税務マネジメントの構築』」を収録しています。こちらもぜひご覧ください。)

はじめに

ESG経営(適正な納税義務の遂行)と資本コスト経営(キャッシュ・フローの創出)を共に実現するための経営の重要性がさけばれる中、「税務戦略」の立案と遂行を具体的に定量化して進めるための手法について、筆者の事業会社での実際の取組みの経験に基づいて考察する。

Ⅰ 問題の所在

Ⅱ 既存のKPIについて

Ⅲ 税務戦略の成果とは

Ⅳ 税務P/Lの構成

Ⅴ 税務P/Lの活用のイメージ

Ⅵ 最後に

Ⅰ 問題の所在

税務マネジメントとは、『課税リスクと税コストをともに引き下げる』ために優先順位づけを行ったうえで有効と思われる方策をどんどん実現していくことであり、その実現を中長期的に支える基本方針が「税務戦略」である。

これは事業会社においては一般的に税務部門が主導的な立場を採って、①経営層の十分な理解を得ながら、②グループ全体の従業員の税に関する意識を向上させることを通じて少しずつ改善させていく重要なテーマである。ところがこの経営戦略においても重要な比重を占めるべき税務戦略の成果を『定量化』する手段が世の中であまり見当...