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移転価格税制についての素朴な疑問 25 無形資産取引について何に留意すべきか(7)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 82頁)

5月号

Ⅰ はじめに

Ⅱ 令和元(2019)年度税制改正とその背景

Ⅲ 無形資産の定義

6月号

Ⅳ DEMPEと独立企業間対価の支払

7月号

Ⅴ 日系多国籍企業と無形資産取引

1 日系多国籍企業の実態

8月号

2 ライセンス取引

9月号

3 研究開発委託取引

10月号

4 譲渡取引

(11月号)

5 管理委託取引

Ⅵ まとめ

1 本稿のまとめ

2 今後のテーマ

Ⅴ 日系多国籍企業と無形資産取引(承前)

5 管理委託取引

(1)問題の所在

すでに1(1)及び(3)で述べたとおり、日系の多国籍企業グループにおいては、親会社がグループ内の無形資産を集中管理しようとする傾向が多く見られる一方で、近時、無形資産の分散保有という現象が生じる場合があるといわれている。外国子会社の研究開発機能が強化された結果、外国子会社由来の無形資産が生まれるケースや、海外M&Aにより、もともと無形資産を有する外国企業を買収するケースが典型例である。

このようなケースにおいて、日本親会社が無形資産の集中保有と管理を実現しようと考えたときに最も直截な方法は、前記4のとおり、親会社が外国子会社から無形資産を譲り受けることである。しかしながら、譲渡対象となる無形資産をどのように評価するかが移転価格税制上問題である上、かかる譲渡によって外国子会社側に譲渡益課税が生じることが懸念される 129

他方で、日本親会社が無形資産を集中管理することには、数...