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国際課税に係る執行状況について

国税庁 国際調査管理官 戸谷 淳哉

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1 国際課税に係る最近の取組みや動向

(1) 経済のデジタル化に伴う国際課税上の課題への対応

経済のグローバル化及びデジタル化に伴い、これまでと異なるビジネス形態の変化が進んでいます。そのような環境の下、市場国に物理的拠点(PE)を置かずにビジネスを行う企業に対して市場国で課税ができない問題や低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致することで企業間の公平な競争条件を阻害する問題などが顕在化してきました。こうした状況に対処すべく、経済実態を反映した国際課税制度の見直しが議論され、令和3年10月に、OECD・G20のBEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework)において、市場国への新たな課税権の配分に関する「第1の柱」と、グローバル・ミニマム課税に関する「第2の柱」について国際的な合意がまとめられました。

第1の柱のうち「利益A」については、参加国が多数国間条約を締結したうえで、大規模・高収益であるグローバル企業グループの利益のうち一部の課税権を、グローバル企業グループが事業を行う市場国へ配分するという制度です。具体的には、原則として全世界での収入金額が200億ユーロ超、かつ...