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移転価格税制についての素朴な疑問 28 移転価格ポリシーはどの程度必要か(1)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 60頁)

Ⅰ はじめに

Ⅱ 移転価格ポリシーの実務と問題点

1 移転価格ポリシーの実務

2 実務上の問題点

Ⅲ 移転価格ポリシーの位置付け

1 国内法令の規律

2 国税庁の公表文書上の取扱い

3 OECD移転価格ガイドライン上の位置付け

Ⅳ 本稿の提案の検討

1 検討結果のまとめ

2 本稿の提案

3 契約書併用モデルと移転価格ポリシー単独モデル

4 両モデルの帰結

Ⅴ まとめ

1 両モデルの比較検討

2 まとめ

Ⅰ はじめに

平成28(2016)年度税制改正により、日本においても、三層構造からなる移転価格文書化制度が整備された。この結果、一定規模以上の企業や取引については、一定の文書化義務が課されている。

他方、移転価格税制の実務では、移転価格ポリシーの重要性が強調されることが少なくない。移転価格ポリシーとは、一般に納税者が国外関連者との間の価格設定をどのように決めるかという方針を定めた書類を指しており、移転価格文書自体とは通常区別されている。

移転価格文書化制度の内容が法令によって細かく規定されているのに対し、国内法令は、移転価格ポリシーの作成を直接的に義務化していないし、ましてその内容を法定しているわけでもない。そこで、本稿は、...