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[全文公開] 国際税務の英単語 LOB(article)(特典条項)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、一般的な税務用語です。

前回、居住者証明(書)( certificate of residence )について解説した際、租税条約に関して、「特典条項」という用語に触れました。この「特典条項」は、英語では一般に LOB と表現されます。日本語でもそのまま LOB と呼んだりしますが、これは Limitation on Benefits の略です。

ここでいう benefit (s) は「税の特典・恩典」という意味であり、租税条約のおかげで源泉税を減免してもらえることなどが、「特典」のイメージです。一方、 limitation は文字どおり「制限」という意味なので、合わせて「特典の制限」という意味になります。つまり、 Limitation on Benefits (LOB) を素直に訳せば、「特典」ではなく、「特典の制限」だということです。

この点、もう少しご説明すると、租税条約には、トリーティー・ショッピング( treaty shopping 。条約漁り)を防止するための規定が含まれている場合があります。つまり、本来であれば租税条約の特典を享受することのできない者が、租税条約の一方の締約国に中間会社を置くなどして、租税条約の特典を受けるようなケース(租税条約の濫用)に対応するための規定ということです。特典条項もその1つであり、一定の条件を満たした者にしか租税条約の適用を認めないということで、これが上記の limitation の意味合いです。

租税条約に関する届出書( application form for income tax convention )では、「特典条項に関する付表」など、「特典条項」という表現が使われていますが、 limitation を含めて直訳し、「特典制限条項」と理解しておいたほうが正確だと思います。

なお、「条項」というところまでちゃんと訳すのであれば、「(条約などの)条項」という意味の article (または clause )を付けて、 Limitation on Benefits (LOB) article [clause] という形でもいいと思います。