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移転価格税制についての素朴な疑問 31(最終回) 移転価格対応はどのように考えたらよいか(2)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 52頁)

Ⅰ はじめに

Ⅱ 本稿の提案

1 提案の概要

2 検討の手順

Ⅲ 移転価格調査の動向とその示唆

1 近時の移転価格調査の動向

2 税務調査の動向からの示唆

3 まとめ

Ⅳ 納税者の移転価格検証の実務

1 最適方法の選択

2 TNMMの実務

Ⅴ 本稿の提案の検討

1 はじめに

2 異常値の特定

3 異常値の要因の検証

4 固めのレンジの設定

5 親子間契約書の整備と取引の実行

6 価格調整条項とその運用

Ⅵ まとめ

Ⅴ 本稿の提案の検討

1 はじめに

上記Ⅲで検討したように、「所得移転の蓋然性」の観点から、利益配分の偏りに着目する近時の移転価格調査の実務に照らせば、異常値を正常であるかのように糊塗するのではなく、異常値を正常化するように現状を改めるべきである。したがって、納税者として真に移転価格課税のリスクを下げようとするのであれば、異常値の特定とその正常化に取り組むべきである。本稿の提案は、①異常値の特定、②異常値の要因の検証、③固めのレンジの設定、④親子間契約書の整備と取引の実行、⑤価格調整条項とその運用の5段階からなるが、正にそのような取組の実現を目指すものに他ならない。

以下では、①から⑤までの各段階を実施するに当たっての...