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近年における国際取引等に係る情報交換制度の進展

PwC税理士法人 税理士・公認会計士 荒井 優美子

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1.はじめに

令和6年度税制改正により、非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度(以下、「暗号資産等取引情報の報告制度」)の創設や、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度(以下、「金融口座情報の報告制度」)の見直しが行われた。

金融口座情報の報告制度は、外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処する国際的な取組みとして、2014年にOECD租税委員会で策定された共通報告基準(CRS)の実施のために、平成27年度税制改正により国内法制化されたものである。そして、金融市場のデジタル化の進展などを踏まえて、特定の電子マネー商品と中央銀行のデジタル通貨が報告制度の対象取引の範疇に含まれるようになり、デリバティブと投資手段による暗号資産への間接的な投資もCRSの対象となるように変更されたことを受けて、その内容が令和6年度税制改正に織り込まれている。

また、暗号資産等取引情報の報告制度の創設は、急速に拡大する暗号資産市場において、非居住者の暗号資産等取引情報を租税条約等に基づいて税務当局間で自動的に交換するための国際基準(CARF:Crypto-Asset...