国際税務紛争を解決するための視点・論点 第1回 国際税務紛争に対応するための手続選択の整理
大江橋法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 河野 良介
第1 はじめに
「国際税務紛争を解決するための視点・論点」を様々な角度から整理することを狙いとして、本誌にて全4回の予定で連載を開始することとなった。第1回は紛争対応のための手続面の整理という切り口から論じてみたい。
移転価格税制やタックス・ヘイブン対策税制といった国際税務分野において、巨額の課税が行われやすいのは、更正通知の受領に関するプレスリリースや関連裁判例等から窺い知ることができる。これらの税制に基づき不本意な更正処分を受けた場合、不服申立てや税務訴訟で処分取消しを求めて争うこともあれば、相互協議によって二重課税の解消を図ることができる場合もある。一方で、国際税務分野では、事前確認制度(APA)に代表されるように、紛争予防の観点から、事前に税務リスクをコントロールするための様々な対策が講じられる場合がある。
本稿は、事前の対応・事後の対応という視点を意識しつつ、国際税務紛争に効果的に対応するための手続選択の整理を行うことを目的としている。移転価格税制、国外関連者寄附金、タックス・ヘイブン対策税制といった類型ごとに、税務紛争解決のための手続の内容や手続相互間の関連性等について概説した上で、各手続のメリット・デメリットについて考察する。
第2 移転価格税制に関する税務紛争に対応するための手続選択上の留意点
(1)手続の全体像
移転価格税制については、我が国のみならず子会社等所在地国(相手国...
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