クロスボーダー現物出資における適格要件の見直しについて
PwC税理士法人 税理士・公認会計士 荒井 優美子
1.はじめに
岸田政権の主要政策の一つである、「新しい資本主義」の実現に向けた取組においては、国内投資の活性化として、新たな産業構造への転換と持続的な成長を確保するためのスタートアップの育成支援や、官民連携による科学技術投資の抜本拡充が図られてきた。イノベーションの促進や民間投資の拡大は、岸田政権前から成長戦略の柱として、税制改正で措置されている。しかしながら、パンデミックの発生や最近の国際政治経済環境の変化によるサプライチェーンの不安定化が増大する中で、戦略的な物資の国内供給力の強化のための対内直接投資の拡大 1 や、国内投資・研究開発を大胆に促進することにより、日本経済再生に向けた動きを加速し、さらに、知的財産の創出等を促し、我が国のイノベーション拠点としての立地競争力を強化する 2 という方針に、政策の方向性が見直されている(図表1)。これは、製造コスト削減のための海外投資への資源の集中から企業の国内投資回帰への変化と、様々な社会課題の解決には、競争力や新たな価値創出に結実する知財の開発及び国外への技術流出防止の保護が必要との認識が明確とされてきたことに対応するものであろう。
本稿では、1....
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